07年12月1日から火山の情報が大きく変わりました。情報が 「警報」に位置づけられただけでなく、そのために自治体だけでな く、地方気象台や国の出先機関などを巻き込んだ協議会を設置した 上で、それぞれの火山に相応しい情報を作ることが必要になりま す。火山のふもとにある自治体や企業などが、今後の対策を考える 上で手がかりとなるインタビュー記事を、ここに公開します。

◎情報の伝達体制を整えた警報化=元気な火山を安全に楽しむためにも−横田気象庁火山課長(2007年12月28日配信)

 12月1日から、火山に関する情報が、大きく変わりました。従来の緊急火山情報や臨時火山情報などに代わり、火山周辺の居住地域に避難や避難準備を呼び掛ける「噴火警報」と、入山規制などを行う「火口周辺警報」を導入するなど、気象業務法に基づく警報化が行われました。緊急地震速報を気象業務法で警報と位置づけたのに伴って、火山現象も警報化したもので、予定していた噴火警戒レベルの導入から、防災上もう一歩進めた動きとなりました。自治体だけでなく研究者らから、まだ充分に理解できていないとの声を聞きました。まとめ役の気象庁火山課の横田崇課長に、警報化の目的などについて、詳しく話を聞きました。

◇噴火後の警報でも防災上、重要な意味持つ

−警報化で何が大きく変わるのですか。

 気象業務法の改正による警報化そのものでは、気象庁は警報を出す義務を負うとともに、警察庁や都道府県、国土交通省、海上保安庁、NTT、NHKに通知する義務を負う。NHKには放送義務が生じ、警察庁と都道府県、NTTは市町村長に通知、市町村長から住民等に周知する努力義務が生じる。火山に関する情報の伝達体制が整ったことになる。市町村などが災害対策基本法に基づいて火山災害に対応する際に活用していただきたい。

 昔は、観測体制もなく、突然、噴火が始まってからしか火山活動を知り得なかった。地殻変動、地震などの観測体制が整って、さまざまな観測データからあるレベル以上は警報として整理できるようになった。今でも、噴火してから分かる山もあり、100%予測できるわけではない。だが、最初の噴火が間に合わなくても、火山活動は継続することが多く、噴火後に出す予警報も十分意味がある。

 警報の内容面では、以前から導入準備を進めていた噴火警戒レベルに、避難とか避難準備、入山規制など、具体的な対応行動を示す言葉が入っていたものと同じで、事前にハザードマップや噴火シナリオに基づき、防災対策を検討し、警報の内容に応じた防災計画を地域防災計画に位置づけていただく。
 今回、「警報」になったことで、「警報を受け取ったらどう活用したらいいか。組織体制はどうしたらいいか」などという問い合わせが一気に来るようになった。「警報」化で、これほど変わるとは思わなかった。そこに意義があるとも言えるだろう。

◇火山防災の連絡協議会は、平時の観光も視野に

−いくら科学的な観測データで警報を出しても、防災対策を行う自治体や住民など、情報の受け手側で受け皿がないと意味がないのですが、ここはどのように進めるのですか。

 噴火の起き方によって、どの範囲に影響があるのかを示すハザードマップ作りや、噴火前に発生する火山性微動や地殻変動などの火山活動の活動状態に応じて入山規制や住民避難などをどう進めるかなど、火山を抱える自治体の地域防災計画に具体的に入れ、警報が出されたときにどうするか、警報に至らなくても何らかの火山現象が起きたときにどうするかなどを具体的に検討することが必要だ。この道筋は、まだ100%の仕上がりではないが、そういうことが始まりだした。ここ数年、県をまたいだ地元の自治体などと連絡協議会を作って進めてきた富士山の取り組みがモデルになる。

−協議会を作って検討しても、結果を出した後は形がい化してしまうことも懸念される。噴火はめったになく、市町村にはそれを支える体力は十分にはないのでは。一つの自治体で複数の火山を抱えるところもあります。協議会をどう動かしていけばいいのでしょうか。現場の火山防災対策に主導的な役割を果たした自治体などの経験者らで、各地の協議会を支援する全国的な組織を立ち上げようと、内閣府で検討が始まるようですが。

 内閣府の「火山情報等に対応した火山防災対策検討会」でも、協議会などの設置運営の難しさは指摘されている。めったに噴火しない火山もあり、経験のない自治体だけでは対策作りは難しく、専門家や気象庁、国土交通省、都道府県などが、いざというときや、予測できなかったときにもどうするかを、連絡協議会の場で具体的に検討していく必要がある。協議会の場を通じて、地方気象台や砂防事務所などのコアメンバーと、自治体首長とのホットラインなども作れるような仕組み作りも目指したい。

 また、協議会を、防災担当者だけの場にするのではなく、観光事業者も入ったような、地域活性化のための場としても使えないかとの指摘もある。いざというときに、住民だけでなく、観光客の安全を含めてどうするかを考えておく必要があるからでもあるが、一方で、元気な火山を安全に楽しむという視点がないと、いざというときに、火山防災が機能しない。それができるようになって、初めて観光との共生ができる。
 噴火を始めたら全部引くのではなく、噴いている山を安全に見ることができることも考える。火山が元気になったときでも、観光客を「安全に」呼べるようにすることも考えて欲しい。住民をどう安全に過ごしてもらうかとともに、両輪になっていけば、平時からの協議会の役割になるだろう。
 その火山をどう楽しむかという観光面の検討も、協議会と別組織にしないで、部会を作って両輪で考えていけないか。協議会への望ましい参画機関を「都道府県、市町村、防災関係機関等」としないで、観光協会などの事業者も具体的に列挙しておければと思う。
 噴火の現場で活動した自治体などの防災担当者はそう多くないが、その経験が生かされることができる支援組織には期待したい。

◇科学の限界を踏まえ、情報出すタイミングも決める

−実際にどこまで活動を予測できるのか、火山研究者の間からも困難さを指摘する声が出ています。この点についてはどうお考えですか。

 もちろん、全部の火山で完ぺきな予想ができるわけではない。ただ、火山は最初から大噴火するというケースはまれだ。地震などの前兆がなくて噴火が始まったとしても、それから観測態勢を組んで情報を集めて状況を確認することで、大災害を回避できる可能性がある。火山は、地震に比べて予想がしやすく、防災上有効な情報を出せる可能性は高い。

 マグマが上昇していることが分かっても、爆発的に噴火するかどうかは分からないなど、火山学はまだまだ分からないことはいっぱいあるが、火山防災で予知研究の重要性が増してきている。サイエンスの限界の中でどういう防災体制を取るのか、地域全体で考える必要がある。

−2000年の有珠山噴火も三宅島雄山の噴火も、火山による犠牲者は出ませんでしたが、一歩間違ったら、大災害になった可能性もあります。学者や専門家は、今後の展開が分からないときに、可能性や善意に基づいて、過剰に安全性や危険性を言ってしまうこともありましたが、サイエンスの限界を踏まえて、どう対応すればいいのでしょうか。

 協議会の議論では、噴火から逃げられるタイミングと、その段階で出せるサイエンスの情報があるのか、具体的な行動とのギリギリのせめぎ合いで決めていくことになる。科学的に分からないのであれば、早い段階で逃げるための情報を出す。きちんと予測できるなら、それに合わせて防災体制を決めていく。分からないことを分からないと勇気を持って言わないと、自治体などが判断を間違う。また、気象庁から情報が出なくても、住民が自主判断で逃げられるような情報も伝えたい。
 さらに、火山を安全に楽しめるには、住民や観光客が「火山のメカニズムを知りたい」というような興味の対象になることも重要だ。
 火山防災対策はまさに今、始まったといえ、その中で、火山研究が重要な役割を担うことになる。火山研究者の役割は、今後も期待したい。

−有珠山噴火では、岡田弘北大名誉教授が、長年、地元の北大観測所で研究を続け、地域の啓発行事なども積極的に行っていたことで、自治体や住民らと連携が取りやすく、岡田さんのようなホームドクターが必要だという指摘もあります。一方で、気象庁も大学も行革で研究者らが常駐する測候所や観測所を廃止しており、ホームドクターの存在は期待できないのが現状です。平時に地域で火山と付き合うときの解説や通訳的な存在をどう確保したらいいのでしょうか。

 ホームドクターが、かかりつけ医のように身近なことを元に対処できる人ということなら、地域で防災を知って解説をでき、専門的な大学病院のような火山噴火予知連絡会の専門家集団と議論できる人がいるのが望ましい。地方気象台もその一員でありたいと思うが、そのすべてに研究者があたるのが難しいのは指摘されたとおりだ。地域の中で行政や住民、報道関係者、高校の先生でもいいのではないか。ほんの少し知識や理解力のある人で、専門家と地域とをつなぐ役割をはたせるような人が、いろいろな立場で複数いていい。防災全体に対してどういうことをすべきかも考えて、つなぎ役の育成も協議会のテーマになるだろう。

◇いざというときの判断は現地で

−噴火が起きたときに、有珠山噴火のように、現地では国レベルまで参加した災害対策本部や現地合同会議などが開かれることが想定されますが、専門家集団の火山噴火予知連の本会議は東京で行われてきました。今後はどういう形になるのでしょうか。「分からないときにどうするか」という話ともつながりますが、無理に統一見解的にまとめるのが難しい状況もある時にどう対応されるのでしょうか。また、気象庁は、どのような支援ができるのでしょうか。

 連絡協議会ができていない火山であっても、噴火が始まれば合同対策会議のような場が開かれることになるだろう。基本的には、地元で決めていくことになる。有珠山のように、気象庁の実務的な責任者も現地に入り、地元で予知連の部会が開かれて、今後の見通しの判断をすることになる。地元でやれることは地元でできるようにするのがいい。予知連の本会議を東京で開催するとすれば、データに基づいた精密検査のような深い検討をすることになろう。

 科学的に整理しても、分からないことは分からないと言うしかない。しかし、行政判断は一つにせざるを得ないので、シングルボイスでの説明になるが、専門家は無理にシングルボイスにこだわらなくてもいいのではないか。分からないと言うことを、複数の人が違う言葉で説明することで、より理解が進むこともある。
 気象庁としては、火山防災対策は、噴火そのもののだけでなく、その後の土石流や降灰被害の影響を軽減するために、気象情報の提供も重要な業務となる。最も大切なのは事前の備えであり、噴火警戒レベルの設定などによって、自治体などが平時に具体的な地域防災計画を検討する支援をやっていかねばならない。(了)

●関連資料
・気象庁:噴火警報、噴火予報の説明
http://www.seisvol.kishou.go.jp/tokyo/STOCK/kaisetsu/volinfo.html
・気象庁:噴火警報、噴火警戒レベルリーフレット
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/kazan/index.html
・内閣府:富士山の火山防災対策
http://www.bousai.go.jp/fujisan/